ゲームの表現は、現実を「記号化」することで成立します。しかしFFを含む最近のゲームは、現実から生み出された記号の“さらなる記号化”になってはいないだろうか? ゲームを参考にして、さらなるゲームをつくってはいないだろうか? そんな自己反省のもと、FF15は徹底的に表現のリアリティを追求することになりました。
合言葉は「接地感」。耳慣れない言葉だと思うのですが、“ゲームと現実がつながっている感覚”のことを私たちはそう呼んでいました。
その結果、ロケハンも自分たちで実際に“体験”するスタイルに。そこでの体験をゲーム内に落とし込むことにしたんです。洞窟、山、サファリパークなどなど、参考になりそうな場所があれば制作チームも各地を飛び回りました。
ときには冷や汗をかくような体験をしたことも。あるとき長野県の駒ヶ岳に登ったのですが、現地に到着すると予想以上に険しい山でした。岩の絶壁に鎖が垂らしてあって、それを命綱にして登って行くような。一つ間違えると、崖下に真っ逆さまです。なんとか無事に山を降りたときには、メンバー全員が気力を使い果たして抜け殻状態でしたね。でも同じ試練を乗り越えたことで、チームの絆も深まった気がしました。
主人公ノクトたちのセリフや仕草にも、私たちのさまざまな体験が反映されています。なかには「暑い、風呂入りたい」とか「腹減った」とか愚痴みたいなものもありますが(笑)。でも、そんな何気ないセリフだからこそ、自分たちが実際に感じたリアルな感覚が詰まっている。私たちが普段感じていることを、キャラクターも同じように感じているんです。現実の延長線上にあるような、リアルなゲームの「接地感」をぜひ体験してみてください。
FAINAL FANTASY XV シニアゲームデザイナー